今年の野村ゼミ募集の課題はクロニクルを書くことです。はてさて「クロニクル」とは何でしょうか。どう書けばいいのでしょうか。ここでヒントを差し上げます。
どんなものごとにも歴史があります。みなさんのこれまでの人生もひとつの歴史です。それと同じようにゲームでもスマホでもラノベでもアイドルでもミュージシャンでも街でも歴史があります。その歴史を整理したものをクロニクルと呼ぶと考えて下さい。
どんな研究テーマについても必ず最初に手がけなければならないことは、その歴史を調べることです。歴史を調べることで、研究テーマの素材(とりあえず項目だけ)を時間的にたどって網羅するのです。今回の課題は、自分が選んだテーマについて大まかな歴史を調べて物語化することです。
では、作業手順を説明しましょう。
(1)対象を決める。何についてのクロニクルを書くのかを決めます。野村ゼミは「メディア文化論」を研究するゼミなので、広くメディア文化(いわゆるカルチャー)の中から、なじみのあるジャンルを選んで下さい。
メディア文化論の領域におけるテーマ地図をご覧下さい。2年前の募集要項です。これはもう使い古したもので、一新したいのですが、最近のものについてはご存じでしょうから、これらを参照して自分で探して下さい。
新しめのテーマを補足しておくと、たとえば、スマホ、ゲーム(もっと細分化された領域がいい)、日本の原作によるハリウッド映画、ラノベ、アイドルグループやバンド(ジャンルで限定してほしい)、少年ジャンプからでたヒット作、学園ものアニメ、PV、ライブハウス、パルコ、やらせ、電子書籍、アマゾン、グーグル、YouTube、赤文字系ファッション誌、フリーペーパー、ネットゲーム、カラオケ、ヒップホップ、フェス、ファストファッション、バラエティ番組、お笑い芸人、スタイリスト本、テーマパーク、インターネットラジオ、少女マンガ、同人誌文化、2次創作、CM(ジャンルを絞って)、ネット配信、個人情報、コスメフリークなどなどの歴史です。
こんなレベルで、何か探してひとつに決めて下さい。模索の仕方は、パルコブックセンターやジュンク堂や蔦屋書店代官山店やタワーレコード書籍売り場や東急Bunkamuraの美術専門店などで、半日、本を眺め歩いてみて下さい。できれば素材豊かな本を1冊買うといいでしょう。大学図書館だと360番台のところにあります。アマゾンもテーマ探しの時はかなり使えますし、古本で安く買えます。テーマは新しいものでも古いものでもいいです。かえって親世代くらいに流行ったものの方がまとまった本があります。あまり新しいものについては自分で調べる必要がありますが、それはもっぱらネットで検索するしかないでしょう。漠然とググるのではなく、そのジャンル専門のニュースサイトを見つけると、素材としては十分です。
(2)段階別に整理する。たとえばポケモンをテーマに選んだ場合、その進化のプロセスには「段階」があるでしょう。ゲームボーイ上での開発、コロコロコミックとの連携、アニメ化、ゲームの高度化、海外への進出、そして・・・といった具合に、歴史を整理するのです。段階を設定するのは、話を明確にするためです。たんなる年表ではデータに過ぎないので、それをわかりやすく段階設定して整理することが常道です。
だいたい5段階前後が適当です。3段階に分けて、それをさらに前半後半にするというのもありです。それは自分の判断できめてかまいません。ただし理由を明確にして下さい。
(3)流れを作って物語る。箇条書きで書かれても、読んで面白くないので、ちゃんと文章にして下さい。調べた範囲でけっこうですから、流れを作って説明して下さい。とくに私が知らないであろうテーマについては詳しく説明して下さい。参考画像を入れても構いません。音や映像であれば、URLやチャンネルを指定して下さい。
(4)情報源を明記する。当然、自分の頭にあることだけで書けるわけがないので、以上のようなさまざまな情報源を利用するのは当然です。最後に使用した情報源を明記しておいて下さい。サイトの名前とURLも書いておいて下さい。
以上です。いかがですか。ポイントは準拠できる事例豊富な本を見つけられるか、あるいは準拠できる専門的なニュースサイトを見つけられるかですかね。手間はかかりますので、早めに手をつけてしまうというのもポイントです。
今回、なぜこういう課題にしたかというと、今年採用の野村ゼミ生には4年生の「演習III」がないからです。というのも、2年後に1年間「国内派遣研究員」になる予定で、その1年間の授業ができないことになっています。ですから例年は2年半(5シーズン)やっているのが、今回のゼミ生は1年半(3シーズン)しかないのです。でも、例年ぐらいのトレーニングはしたいので、応募段階でスタートダッシュしていただかないと間に合わないと判断したからです。
選抜基準については、負担が大きいので、一定水準であれば、なるべく合格としたいと思っています。一定水準というのは、上記のやり方でちゃんと書いてあると判断したもので、A4で10枚前後(図表込み)であることです。
シーズン1(2年後期)は、これをもとに発表していただくことから始めたいと思っています。ご健闘を祈ります。
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